ここ最近、難しい事例の書き込みばかりでしたので再度任意売却の基本について書いていきます。
任意売却という選択肢①
何らかの事情で、住宅ローンを払い続けることが難しくなった場合、競売などの強制的な方法ではなく、家の所有者の意思で家を売却し、その代金をローンの返済に当てる方法があります。任意売却と呼ばれる不動産売買で、競売に比べ、債務者の負担が軽減され、早期の解決が期待できます。「任意売却という選択肢①」では、任意売却についてわかりやすく解説します。
任意売却ってなに?通常の不動産売却とどう違うの?
病気やリストラなど、思いがけない事情により、住宅ローンを支払える目処が立たない場合やすでにローンを滞納している場合に、債権者(借り入れ先の金融機関)と話し合い、債権者の同意を得て、ローンの支払いが残っている状態で住宅を売却することを、任意売却といいます。
債権者の同意が必要であること、そして売却金額についても、家の所有者ではなく債権者である金融機関が決定することが、通常の不動産売買との違いです。
自分の家を売却するのに、なぜ債権者の同意が必要なのかというと、ローンを組んで住宅を購入した場合、残債(未返済の借入金)を精算しなければ、自由に売却することができないからです。
住宅ローンを滞納したままにしておくとどうなるの?
住宅ローンの滞納が4〜6か月以上続くと、債権者である金融機関は、住宅ローンを回収するために家を差し押さえ、裁判所に競売の申し立てを行います。競売とは、裁判所が価格を設定せずに土地・建物を売り出し、購入したい人が希望価格を申し出る販売方法で、市場価格の7割前後で売却されるのが一般的です。
ちなみに裁判所から「競売開始決定通知」が届くと、競売の対象となる不動産の現況調査が行われ、現況調査報告書、評価書、物件明細書などの必要書類が揃うと、入札が行われます。「競売開始決定通知」が届いてから入札までの期間は、6か月程度。早い場合は、4か月で売却されてしまうケースもあります。
競売と任意売却の違いは?
競売は裁判所が手続きを行うため、家の所有者の希望は一切反映されません。売却価格も、前述したように、市場価格の7割前後に設定されるのが一般的です。一方、任意売却の場合は、市場価格に近い価格が設定されます。
たとえば、市場価格が3000万円の場合、競売では3000×0.7=2100万円前後で売却されることになり、その差は900万円にも上ります。売却価格が安ければ、ローンの残債は多くなりますが、売却価格が高ければ、残債は少なくなり、その分返済の負担も軽くなります。
また、売却後のローンの残債についても、競売の場合は、一括返済が求められますが、任意売却の場合は、債権者に相談をし、無理なく返済できるよう考慮してもらうことができます。
また、競売の場合、登記料や測量費用、仲介手数料といった不動産売買に伴う諸経費や引っ越し費用などは、家の所有者が用意しなければなりません。一方、任意売却の場合、不動産売買に伴う諸経費は、売却した代金から支払うことができますし、売却代金から引っ越し費用の一部を出してもらうなど、債権者に便宜を図ってもらえる可能性もあります。
任意売却の心理的メリット──事情を知られずに売却できる
さらに競売と任意売却では、心理面で大きな違いがあります。それは、ローンを返済できないという事実が明らかになるかどうか。
返済できないのは事実であっても、そうした情報はなるべく人に知られたくないと思うのが人情というものです。
競売では、買い手を募るために、不動産競売物件情報サイトに情報が掲載されてしまいます。しかし、任意売却では通常の売却と表面上は変わらないため、ローン返済ができないという経済事情や差し押さえになったことが公になる可能性は低くなります。